聖書絡みでユダヤ人というと、バビロン捕囚で有名な、黒い髪、黒い目を持つセム系の人々を連想してしまうが、現代社会でユダヤ人というと、むしろ白人系の人々を連想する。

ユダヤ人が「ユダヤ教を信仰する民族」と定義されることを考えると、これは別に不思議なことではないが、わたしはこのことを知るまではセム系の『モーセの民』が全てのユダヤ人の起源だと勘違いしていた。

離散した各地での混血により、白人系のユダヤ人が増えていったのだろうと、そんな風に想像していた。これにはユダヤ人を血統で選別したヒトラーの考えかたが知らず知らず影響していたのかもしれない。

37年から100年頃に生きたユダヤの歴史家『フラウィウス・ヨセフス伝』で見たように、ヨセフスの時代、ユダヤ教への改宗者は地中海世界、ローマでも増え続けていた。
キリスト教は当初、そうしたユダヤ教に魅せられた異教徒にとって、与しやすいユダヤ教、割礼などのない敷居の低いユダヤ教と感じさせた側面があったようだ。

7世紀から10世紀にかけてカスピ海及び黒海沿いに栄えたバザール汗国のように、国民がそっくりユダヤ教に改宗した例もあった。

ユダヤ教を国教としたこの国は10世紀に滅亡し、住人たちは各地へ離散してしまったという。