救急病院にいた白ネコ、カレンダーの絵の白ネコ、とここまで伏線を張っておきながら、白ネコを登場させないというのは、まずい。
白ネコは生贄として鍾乳洞に囚われの身となっている乙女が連れてきたペットで、その白ネコが3人の子供たちを少女のもとへ導く。でなければ、巨大鍾乳洞の中で、3人は乙女に出会うことはなかっただろう。
2008年02月
№7⇒反故
№7⇒反故
連載43のシフォンケーキが出てくるくだりを書いていて思いついたのだが、恐竜の正体は、シフォンだったことにしよう。
翔太のピアノの音になった泣き声が鍾乳洞の天井にぶつかり、その音の玉がネオンテトラに似た小鳥とか、コリドラスにそっくりの小鳥とかに変わる。
コリドラスそっくりの沢山の小鳥が、恐竜の胴体をつつくと、恐竜は出来損なったシフォンのようにへしゃげ、縮むのだ。
ということは、その伏線として、シフォンケーキは(瞳には気の毒だが)失敗作ということにしなければならない。瞳の担当したメレンゲ作りはやわらかくて、ケーキをしっかりとふくらませることはできなかった。
それで型から出す彼女の奮闘もむなしく、ケーキは崩れ、3人の子どもたちはそれを黙々と食べる。
№6 物語 5.接着剤の内訳
ネオンテトラ、ナマズの仲間コリドラス。草原のような水草。水槽に量の両のてのひらをくっつけて、水槽の中の世界に見入る翔太。
そのあいだ紘平は、瞳がシフォンケーキを型から出すのを手伝う。瞳は、お母さんから、そういいつかったのだ。その作業中、彼は瞳に、不思議な接着剤のこと、弟翔太に惹き起こしてしまったことについて、打ち明ける。
瞳は、陽気で頭の回転の速い、思い遣り深くもある少女なので、どんな反応をするかだ。
説明書によれば、接着剤の使用は6回となっている。
1. 肉まんと紘平の口
2. ピアノ協奏曲の音色と弟翔太の口
3. 今日としあさって
紘平と瞳の話し合いでは、残る接着剤使用の内訳は次のようなものとなる。
4. 翔太のピアノの音色をした泣き声を、元の泣き声に戻すことに使うのに1回分。
5. 遊びの切っ掛けを作るのに1回分。具体的には、電器店の倉庫の中の迷路の先に巨大鍾乳洞をくっつける。
6. 遊びを締めくくるのに1回分。具体的には、壁を通り抜けて延びた鍾乳洞を消滅させるために、壁に開いた穴を接着剤で塞ぐ。つまり開いた壁の端と端をくっつけて、壁を元通りに再生することで、接着剤で創り出した別の世界を切り離す。
3人の冒険は無事に終るものの、鍾乳洞が入り口となっている中世風の世界は存在したままだし、翔太の泣き声も取り戻せていない。さらには、紘平が接着剤で消した2日間のために、元いた世界は混乱していた。これら全てを解決するために、接着剤は最低3回分は必要なのだが、残っているのは2回分だけだ。
紘平と瞳は、接着剤以来の時間をなかったことにするために、これまでのことを紘平が夜見る夢の世界にくっつけることにする。これで1回分。残る1回分は、現実の世界で叶うことになる。病気のおばあさんを慰めるために使うのだ。